【宙組】夢千鳥

宝塚歌劇団の夢千鳥を見てきた。

夢千鳥は、私の好きなジェンヌさんである宙組の和希そらさんの主演作で、

4/22〜25に、宝塚大劇場に併設されている小劇場、バウホールで上演された。

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ご縁があり、初日と、緊急事態宣言で期せずして千秋楽となった日に観劇することとなった。

 

 

あらすじ

映画監督の白澤優二郎は、事実婚状態の女性である赤羽礼奈がいる中、監督作の新人女優と浮名を流すような男だ。

そんな彼の次回作は、竹久夢二を主人公とした映画。

夢二もまた、多くの女性と関係してきた男だった。

 

現代でも有名な画家、竹久夢二

彼が主に関わった女性は三人、

夢二の年上の妻で勝ち気で凛とした他万喜(たまき)。

若々しく理想に燃える絵描き志望の女学生、彦乃。

複雑な生まれながらもどこか人懐っこく、強かに生きるお葉。

そんな彼らの映画を撮るうち、優二郎は夢二との境界が曖昧になるほど、彼の人生に飲み込まれていく。

 

 夢千鳥についての感想

白澤優二郎、竹久夢二はともに和希そらさんが演じる。

夢二が愛する女性たちが三人が三人とも、非常に魅力的だったのが、特筆すべき点だ。

天彩峰里さん演じる他万喜はひんやりとした美貌がぞっとするほど美しく、夢二との愛憎にのたうち苦しむさまは、まさに狂気を孕んだ美しさ、というものを体現していた。

山吹ひばりさん演じる彦野は初々しく純真で、かと思うとはっとするほどの大胆さを併せ持っており、こんな人が身近にいれば愛さずにはいられないだろう。

水音志保さん演じるお葉は何者にも囚われないゆえに素直で艶やかで、強か。己の行く道を己で選ぶことができるヒロインだった。

 

観客は、三人の全く異なるタイプの女性と夢二のやりとりをみていくうちに、様々な夢二の顔を見ることになる。

どれが本当の彼かと思うが、どの彼も等しく彼の一部なのだ。

しかし彼は、執着と愛の区別が付かず、誰のことも本当に愛することができない。

脚本の旨さと和希そらさんの演技や男役芸で、その哀れさを含めて魅力的にみせられてしまう。

 

解釈について

では、白澤優二郎と竹久夢二は全くの他人だったのだろうか?

先述の通り、白澤優二郎、竹久夢二はともに和希そらさんが演じている。

示唆するようなセリフなどはないが、白澤優二郎は竹久夢二の魂が生まれ変わった人物のように思える。(夢二と他万喜、白澤と赤羽は同じようなすれ違いを繰り返している)

また、少し調べたところ、優二郎はどうも実在しない人物であるようだ。

実在の夢二の物語に、白澤優二郎という人物を加えることで、夢二は夢二としては愛することを分からぬままに終わってしまったが、優二郎として夢二の生涯をあらためて見つめ、愛を知ることができた、そういう物語となったのではないだろうか。

 

本作は、夢二パート、優二郎パートともに、ほぼ夢二と優二郎の視点で語られる。

そのため、全編にわたってどこかふわふわと夢の中のような感触がある。

(作中、夢二、優二郎の把握していない事象は発生しなかったかと思う)

また、この夢の中のような感触が、夢二と優二郎の境界を曖昧にすることに一役買っていたように思う。

 

観劇しながら、ハッピーエンドにはなりようがないのでどういう結末にするんだろうと思っていたが、心配の必要はなかった。物語として美しい構成になっていたと思う。

また、舞台美術もシンプルだがとてもセンスがよく、夢千鳥の世界観と合っていて美しかった。

フィナーレは、(バウでの観劇が初めてだったので断言できないが)バウ作品としては多く演じられていたと思う。また、ラインダンスもあり、とても見応えがあった。

中でも、燕尾のシーンはとてもかっこよく美しくとても好きです……

演出家の栗田優香さんは本作がデビュー作ということは知っていたが、とても美しい話で驚いた。次回作もとても楽しみです。

 

最後に

ぜひ多くの方に届いてほしいと願っていたところ、たった今配信が決定したとの知らせを受けた。

5月8日(土)19:00配信開始で、見逃し配信などはないとのこと。

大変よい作品だったので、お時間、ご興味ある方は、ぜひぜひ配信を御覧ください。

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